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のぼうの城 その2

時は天正18年(1590年)、天下統一を目前にした豊臣秀吉が北条氏を攻めた小田原の役。主人公は、小田原城の支城であった忍城の成田家一門(後に城代)の成田長親。
二万三千にふくれあがった忍城攻めの秀吉側の大将・石田三成の軍勢に対して、女子供を含め、領民をあわせた忍城の籠城兵は三千七百四十人。
物語は、この圧倒的な兵力に対して、小田原城落城まで持ちこたえた忍城の攻防戦が描かれています。

成田長親は、領民から「でくのぼう」を略した「のぼう様」と呼ばれる人物。のぼう様は百姓仕事が好きで手伝おうとするのですが、不器用なために、百姓たちからは迷惑がられる始末。でも、どことなくにくめず、親しまれてもいます。

そんなのぼう様に、成田家一の家老・正木丹波守利英は、ただのでくのぼうかと落胆させられる場面も多いのですが、心の奥底で、ひょっとしたら長親には「将器」があるのでは!? とも思っています。「ただのでくのぼうなのか、それとも……」と読者が感じているギモンやそれに対する答えが丹波の目を通して、語られていきます。

「丹波は、長親の言動に絶えず失望し続けてきたが、一方であの大男の持つ一種の吸引力を、得がたいものと感じていた。決して人を許さぬ和泉が長親には気安く声をかけ、靭負は長親に話し始めるとますます調子が上がり、言葉の留まることを知らなかった。家中の者や百姓たちは、長親をあなどりながらも、かえってそのためかあけすけに腹を割って話しかけた」

カリスマ性や畏怖などで引っ張っていくタイプとは別の、こののぼう様の「将器」は読んでいて楽しいかったです。


『のぼうの城』
(和田 竜/小学館)


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