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万城目学のアーカイブ

ホルモー六景 その3

第四景「同志社大学黄龍陣」では、『鴨川ホルモー』で、京大青竜会分裂の危機に陥ったきっかけとなる、芦屋と元彼女・山吹巴が会っているのを早良京子が見かけるシーンが登場します。

「黄龍」は同志社なんですね。

第五景「丸の内サミット」は、京産大玄武組第四百九十八代会長・榊原康と、龍大朱雀団第四百九十八代会長・井伊直子が登場するんですが、ここで、“東京”にもホルモーが存在することがわかります。一橋、御茶の水、と。他の朱雀と玄武はどこなのか気になります。大学の位置関係を調べればわかるかも。

また、「朱雀団」から「フェニックス」へと名称と変更した経緯もつづられています。

第六景「長持の恋」は、立命館白虎隊・細川珠実が主人公。高村の彼女になる人です。

珠実のアルバイト先『狐のは』は『鹿男あをによし』にも登場します。

「ホルモー」の雄たけびを放った体験が原因なのか、戦国時代の人物・なべ丸と時空を超えた文通がかわされるように。この作品はなんか感動しました。

この『ホルモー六景』は、『鴨川ホルモー』ありきの作品で、通常なら前作を超えることはないんですが、これはこれで1編1編が完成されていて、見ごたえがありました。


『ホルモー六景』
(万城目 学/角川書店)


ホルモー六景 その2

第ニ景「ローマ風の休日」は、あの凡ちゃん・楠木ふみを主人公にした作品。

『鴨川ホルモー』でも触れられていたイタリア料理屋でのアルバイトの様子や、同じバイト先で働く“少年”聡司とのやりとりが描かれています。

バイト先の「仕分け」でオニ展開の才能をかいまみることができます。

時期でいうと、第17条ホルモーが発動された後の話なので、黒いオニが見えるようになっていて、夜のひとり歩きがコワくなっています。

第三景「もっちゃん」は、居酒屋「べろぺろばあ」の店長・安倍氏が京大生だったころの話。ここで、最後の方で、現在の安倍と高村たちのやりとりも展開されているんですが、話の中から「黄龍陣」が復活したことがうかがいしれます。

その復活の儀式を期せずして行ってしまった話が描かれているのが、第四景「同志社大学黄龍陣」。芦屋の元彼女・山吹巴を主人公にした作品。この作品は、第三景とつながっているのみならず、第一景のラストともつながっています。

つづく


『ホルモー六景』
(万城目 学/角川書店)


ホルモー六景 その1


『ホルモー六景』
(万城目 学/角川書店)

『鴨川ホルモー』の続編、というよりは、「ホルモー」に関わる人物を主人公とした6編からなるオムニバス作品。

作品によっては、前作と時系列が重なっていたりして、前作と続けて読むと、楽しさが倍増します。さらに、この6編の中でも、話がつながっているものもあり、からみあっています。

第一景「二人静」は、京産大玄武組の最強メンバー、定子と彰子の友情と恋をめぐる話。お互い彼氏ができず、クリスマスも一緒に過ごしていた仲良き二人が、定子が恋することにより、友情に亀裂が入ります。

定子が一条の前で、オニ語を発するところは、せつなく笑えます。

男に対して注文の多い定子の嫌いな男の定義が面白いです。

「例えば定子はすぐに駅まで送ろうと言ってくる男が嫌いだった。(中略)例えば定子は初対面で『さっちゃん』などと気安くファーストネームを呼んでくる男が嫌いだった……」

つづく


鴨川ホルモー


『鴨川ホルモー』
(万城目 学/産業編集センター)

このタイトルになっている「ホルモー」って何なの? とずっと気になっていました。前半では読み進んでいくうちに、作中の何も知らない新入生たちと同じ目線で、ホルモーのナゾ!? が解き明かされていきます。

“競技名”になっている、「ホルモー」を絶叫させられるシーンを思い浮かべると、せつなさとともに笑いがこみ上げてきます。

京都が舞台で、「鴨川デルタ」とか、森見さんと共通のワードが出てきたりするので、両方読んでいると、一層楽しめます。

それにしても、芦屋や楠木ふみのオニ展開のくだりを読んでいると、この競技に参加したくなります。“オニ”たちをどのように展開しようかと、戦術を考えたりしてしまいました。でも、「ホルモオオオォォォーッッ」だけは、叫びたくない。


鹿男あをによし

奈良を舞台に、2学期の限定で、女子高に赴任することになった主人公・「おれ」が、ある日突然、鹿に話しかけられ……。

これは立ち読みしていたときに、飛び込んできた「マイシカ」という言葉にやられて購入しました。


『鹿男あをによし』
(万城目 学/幻冬舎)

この作品は、掘田ちゃんのキャラの魅力に尽きると思います。剣道の大和杯のくだりは読み応えがありました。

また、夏目漱石の『坊っちゃん』のエッセンスが織り込まれているのも楽しいですし、また、藤原君、重さんなど、まわりのキャラもほのぼのとしていて、緊迫した内容を含んでいるんですけど、いい意味でのユルさがあり、よかったです。


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